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正しく理解して新型コロナワクチン接種の検討を

正しく理解して新型コロナワクチン接種の検討を

ワクチン接種は感染症予防において最も有効な手段

2021年5月15日現在、新型コロナウイルスワクチン接種が順次始まっています。わが国には現在、薬事承認(厚生労働大臣が製造販売を承認)した1社のワクチンと、現在有効性や安全性を審査中の2社のワクチンがあります。

新型コロナウイルス感染症に限らず、ワクチン接種は感染症予防において最も有効な手段といわれています。その起源は、1796年にイギリスの医学者であるジェンナーが牛痘(牛の天然痘)の菌を人に植え付けると、その人は天然痘を発症しないことを発見したことといわれています。また、19世紀後半にフランスの細菌学者であるパスツールは細菌の研究から、狂犬病のワクチンを開発することに成功しました。彼らの研究によって、病原体の培養や弱毒化によるワクチンの製造法を確立し、以後さまざまな感染症に対して、ワクチンが作られるようになりました。ユニセフによると、現在ワクチン接種により、年間200万人から300万人の人命が救われていると推定されています。

従来のワクチンとは違うしくみの新型コロナウイルスワクチン

従来型のワクチンには、大別して生ワクチンと不活化ワクチンがあります。生ワクチンは、病原体を弱めた微生物やウイルスを使用するため、その病気に自然にかかった状態とほぼ同様の免疫が得られます。獲得免疫力が強く、免疫持続時間が長いという特徴があり、代表的なワクチンは、BCG、風疹、麻疹、水痘などがあります。

一方の不活化ワクチンは、病原性をなくした細菌やウイルスを使用するため、生ワクチンに比べ免疫がつきにくく、複数回に分けての接種が一般的です。代表的なものには、インフルエンザ、日本脳炎、肺炎球菌、肝炎などのワクチンがあります。

今回の新型コロナウイルスに対しては、従来の生ワクチンや不活化ワクチンとは異なり、遺伝子を利用したワクチンが開発されました。現在承認されている新型コロナウイルスワクチンは、ウイルスを体に入れずに、人工的に合成したウイルスの遺伝子を注射することにより、体内で新型コロナウイルスが持っているたんぱく質を作り出します。このたんぱく質が免疫システムに記憶され、抗体を作り出すというしくみです。

感染症予防の効果と副反応のリスクの双方を理解したうえで受けよう

ワクチンに期待される効果には、感染そのものを防ぐ「感染予防の効果」、感染しても症状が出るのを抑える「発症予防の効果」、症状が出ても重症にならないようにする「重症化予防の効果」、多くの人がウイルスへの抗体を持つことで社会全体が守られる「集団免疫の効果」があるとされています。今回の新型コロナウイルスのワクチンは、感染を防ぐものではなく発症や重症化、集団免疫の効果が期待されています。

一方で、ワクチン接種には副反応として、接種部位の腫れやしこり、倦怠感や発熱などが現れる場合があります。ほとんどが軽いもので、数日以内に消失しますが、ごくまれにアナフィラキシーなどの重い副反応が起きることがあります。

副反応が起きた場合は予防接種法に基づく健康被害救済制度が適用されるなど、接種環境は整備されていますが、接種には本人の同意が必要です。感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について正しく理解したうえで、自らの意志で受けるようにしましょう。

*アナフィラキシー…アレルゲン等の侵入により、複数臓器に漸新世にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応のこと。