炭水化物摂取の割合が低い人ほど、がんリスクが高くなる?
低炭水化物スコアを用いてがんの罹患リスクを検証
国立がん研究センターが行っている多目的コホート研究として、1995年および1998年に岩手県、長野県、茨城県、長崎県、大阪府などの10保健所管内に住んでいた45~74歳の男女のうち、がんの既往歴のない約9万人を17年間(中央値)追跡調査し、低炭水化物食とがん罹患との関連を調べました。
近年、糖質制限という言葉がはやるなど、低炭水化物食が注目されていますが、食事における三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)のうち、炭水化物の摂取を少なくすると、相対的にたんぱく質と脂質の摂取が多くなります。そこで、同センターは1日のエネルギー摂取量から、炭水化物、たんぱく質、脂質の割合を算出する「低炭水化物スコア」を用いて、がん罹患リスクを検証しました。「低炭水化物スコア」は、炭水化物からのエネルギー摂取の割合が高いほど低スコア、たんぱく質・脂質からのエネルギー摂取の割合が高いほど高スコアとし、それらを合計して評価します。さらに、たんぱく質・脂質の摂取源を動物性食品と植物性食品に分け、それぞれの食品に基づく低炭水化物スコアも算出しました。
動物性食品でたんぱく質・脂質を摂取するとリスクはより顕著に
低炭水化物スコアは低い順に5つのグループに分け、もっともスコアが低いグループを基準として、がんの罹患リスクを調査しました。その結果、低炭水化物スコアが高い(相対的に炭水化物の摂取量が少なく、たんぱく質・脂質の摂取量が多い)ほど、全部位および直腸がんの罹患リスクが高く、胃がんの罹患リスクは低いことがわかりました。
また、相対的に炭水化物の摂取量が少なく、動物性食品由来のたんぱく質・脂質の摂取が多い(動物性食品に基づく低炭水化物スコアが高い)ほど、全部位のがん、大腸がん、直腸がん、肺がんの罹患リスクが高く、胃がんの罹患リスクは低いという結果でした。
一方、植物性食品の場合は、低炭水化物スコアが高いほど胃がんの罹患リスクが低かったものの、他のがんでは罹患リスクの上昇は認められませんでした。
今回の研究で、炭水化物の割合が低いほど、がんになるリスクが高くなることが示されました。特に、炭水化物を控えて、その分、肉やバターなど動物性食品由来のたんぱく質や脂質をとっていると、がんの罹患リスクが上がる可能性があります。
極端な食事制限よりも、バランスのよい食事と適切な運動で減量しよう
極端な糖質制限などによる低炭水化物食は、高脂質食になりがちで、がんだけでなく生活習慣病のリスクも増大させることにもつながりかねません。健康的な食事は、ごはんやパン・麺類などを主食として、おかずをうまく組み合わせて栄養のバランスをとることです。減量をする際も、極端な食事制限などよりも、栄養バランスのよい食事と適切な運動を積み重ねることが、結果として効率的なダイエットにつながっていきます。