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2020年度の国民医療費は4年ぶりに減少も、8年連続で40兆円超え

2020年度の国民医療費は4年ぶりに減少も、8年連続で40兆円超え

新型コロナ感染症の受診控えで、過去最高だった前年度より減少

厚生労働省から、「2020(令和2)年度国民医療費の概況」が発表されました。国民医療費とは、医科・歯科診療医療費、薬局調剤医療費など、保険診療の対象となる病気やけがの治療に要した費用の推計です。保険診療の対象とならない費用や、正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種などの費用は含まれません。

2020年度の国民医療費は42兆9,665億円で、過去最高だった前年度に比べて1兆4,230億円、3.2%減と、4年ぶりに減少となりました。これは新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う受診控えの影響とみられています。減少したとはいえ、2013年度以降8年連続で40兆円の大台を超えています。

65歳以上は1人当たり約73万円、75歳以上では約90万円

国民医療費を年齢階級別にみると、15~44歳は5兆129億円(構成割合11.7%)、45歳~64歳は9兆4,165億円(同21.9%)、65歳以上は26兆4,315億円(同61.5%)でした。1人当たりの国民医療費は34万600円で、前年度の35万1,800円に比べて1万1,200円減少していました。年齢別にみると、65歳未満では18万3,500円だったのに対し、65歳以上は73万3,700円、75歳以上は90万2,000円でした。年齢が上がるごとに1人当たりの医療費は増えており、65歳以上の医療費は65歳未満の約4倍、さらに75歳以上では約5倍となっています。

急速に少子高齢化が進むなか、2025年にはいわゆる団塊の世代がすべて75歳以上になり、今後も高齢者の医療費の増加が見込まれています。

加入事業所の約8割が従業員9人以下の中小企業である協会けんぽの財政は、新型コロナウイルス感染症の影響をはじめ、景気変動の影響を受けやすい構造にあります。また、医療費の伸びを上回る赤字構造に加え、高齢者医療への拠出金等が今後も増加することを踏まえると、財政状況は楽観を許さない状況です。このため、協会けんぽは将来を見据えて、加入者の健康増進の取り組みを中心とした医療費の適正化をさらに推進するとともに、保険料率を、中長期的な観点で設定し、財政の安定を図っています。

なお、国民皆保険制度を維持し、必要とされる医療を確保していくには、現役世代の負担軽減、全世代で支え合う制度への転換が必要です。