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ストレス解消のための快眠法

ストレス解消のための快眠法

心身の健康のためには、質のよい睡眠が欠かせません。夜に自然と眠気が生じ、朝スッキリ目覚められるような睡眠がとれるのが理想的です。しかし、私たちは日々のストレスなどが原因で、寝つきが悪かったり、日中に眠気を生じることがよくあります。また、寝つきはよくても十分な睡眠がとれていなければ、それ自体がストレスになります。
長引くコロナ禍でもストレスを上手に解消し、睡眠の質を高めるにはどうすればよいのでしょうか。

よい睡眠は、心身ともに健康で充実した生活の第一歩

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」(2019年)によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合が、男性37.5%、女性40.6%であり、男女ともに20~50歳代では「日中、眠気を感じた」と回答した人の割合が最も高かったことがわかりました。

また、コロナ禍による生活習慣の変化や運動不足により、不眠に悩む人が増加しています。ストレスや生活リズムの乱れから不眠になると、日中の集中力低下や体調不良などを招きます。睡眠は休養に必須であるだけでなく、記憶・気分調節・免疫機能の増強など、さまざまな精神機能や身体機能に関連しているとされます。すこやかな睡眠を保つことは、心身ともに健康で充実した生活を送るための第一歩であるといえます。

睡眠に関する不調・障害を感じたら、専門医に相談を

必要な睡眠時間は、個人によって大きく異なり、また年齢によっても変わります。働き盛りの20~30代の世代は、勤務形態の問題などから必要な睡眠時間を確保しづらいこともあります。休日に2時間以上朝寝坊をしたり、日中(特に午前中や夕方)に眠気を感じたりしている場合は、必要な睡眠時間が足りていない証拠です。睡眠不足による疲労の蓄積を防ぐためには、毎日必要な睡眠時間を確保することが大切です。しかし、睡眠時間を確保できずに日中に眠気が生じた場合は、午後の早い時間に30分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善に効果的です。

中年期以降にみられる睡眠障害として、男性で多くみられる睡眠時無呼吸は、質のよい睡眠がとれなくなるだけでなく、動脈硬化を促進して心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系疾患の原因ともなり得ます。一方、寝るときに脚がむずむずして睡眠が障害されるレストレスレッグス症候群は、鉄欠乏性貧血が原因の一つともいわれており、女性に多くみられます。睡眠中の激しいいびきや呼吸停止、手足のぴくつきやむずむず感、歯ぎしり、しつこい昼間の眠気などが生じたら、早めに睡眠障害専門の医師に相談することが大切です。

目覚めのよい朝を迎えるためのコツ

①毎朝同じ時間に起床・就寝しましょう
…睡眠と覚醒のリズムが乱れないようにすることが大切です。

②目が覚めたら、朝の太陽の光を浴びましょう
…朝に浴びる太陽の光は、脳の中にある体内時計に作用し、生活リズムの調節作用をもたらします。朝目が覚めたらカーテンを開け、照明をつけて明るい室内環境を保つようにしましょう。

③朝食を同じ時間にとりましょう
…毎日の3度の食事、特に朝食を同じ時刻にとることで、体内時計の調整に役立ちます。

④昼間に適度な運動・ストレッチを取り入れましょう
…昼間に運動をすることで体内時計が整います。また、運動することによって体が適度に疲れると、よく眠れるようになります。

⑤長時間の昼寝は控えましょう
…長時間の昼寝は夜の睡眠量を減少させるため、30分を超える昼寝は控えましょう。

⑥寝る前に入浴をしてリラックスしましょう
…床につく1~2時間前に、熱すぎない湯にゆっくりつかることは、心身のリラクゼーションを促し、眠りにつきやすくなる効果があります。

⑦寝る1~2時間前から、照明強度を落とし、明るい光を避けましょう
…床につく1~2時間前から、徐々に照明強度を落とし、眠りを促すホルモン(メラトニン)の分泌を促しましょう。スマートフォンなどの液晶画面から出るブルーライトは覚醒度を高めるため、夜間はできるだけ使用しないように心がけましょう。

⑧コーヒー、たばこ、お酒との付き合い方を見直しましょう
…カフェイン、ニコチンには覚醒促進作用があるため、寝つきを悪くします。また、お酒は寝つきをよくする反面、睡眠が不安定になり、夜中に何度も目が覚めたり、早朝に目が覚めてしまう原因となります。できるだけ控えるようにしましょう。

⑨よく眠れなくても心配しすぎるのはやめましょう
…どうしても眠れないときは、一度床から離れ、リラックスするように心がけましょう。

堀 美智子 先生

監修者 松本 悠貴 先生 (医師/産業医/医学博士/日本大学医学部社会医学系公衆衛生学分野助教)
平成18年久留米大学医学部医学科卒業。久留米大学現学長(前・久留米大学医学部神経精神医学講座・教授)内村直尚先生らとともに、労働者を対象とした新しい睡眠尺度である3次元型睡眠尺度(3 Dimensional Sleep Scale; 3DSS)を開発。その後、産業医および社会医学研究者として職場の安全衛生管理および健康増進の両面から働く人の睡眠問題について取り組んでいる。現在は日本大学医学部・社会医学系・公衆衛生学分野の兼板佳孝教授らとともに、働き方改革に関わる新しい尺度の開発や、中高生のネット・スマホ依存に関する疫学研究を行っている。