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紙巻たばこから加熱式たばこに切り替えるよりも、禁煙を! 

紙巻たばこから加熱式たばこに切り替えるよりも、禁煙を! 

紙巻たばこの需要は年々減少する一方、加熱式たばこの使用者は増加傾向にあります。加熱式たばこは、紙巻たばこに比べて煙やにおいが少ないと思われがちですが、紙巻たばこと同程度のニコチンが含まれるものもあります。健康のためには、紙巻たばこから加熱式たばこへ切り替えるのではなく、すべてのたばこをやめて完全禁煙しましょう。

加熱式たばこの使用は、若い世代を中心に増えている

加熱式たばことは、「たばこ葉やその加工品を電気的に加熱し、発生させたニコチンを吸入するたばこ製品」*1です。日本では2013年から販売が開始されました。電子たばこ(香料などを含む溶液を電気的に加熱するもので、日本で販売されているものにはニコチンが含まれない)やかぎたばこなどと合わせて、「新型たばこ」と称されることもあります。

2019年の厚生労働省の調査*2では、喫煙者全体における加熱式たばこの使用者の割合は26.7%と、4人に1人が使うまでに普及しています。比較的若い喫煙者で加熱式を使用する人が多く、男性は20代で38.4%、30代で48.1%。女性はさらに多く、20代で52.9%、30代で50.0%と半数に達していることがわかりました。また、紙巻たばこと加熱式たばこを併用している人がいるのも若い世代にみられる特徴です。

加熱式たばこが紙巻たばこよりも健康影響が少ないかどうかは不明

加熱式たばこの普及の背景には、「煙やにおいが紙巻たばこよりも少ない」「周囲の人や自分への健康影響が少ない」といった期待があるようです。しかし、加熱式たばこに含まれるニコチンの量は、紙巻たばこより少ない製品もありますが、同程度の製品もあります。加熱式たばこのみから発生する化学物質や、紙巻たばこよりも多く発生する化学物質もあり、すべての曝露量が減少するわけではありません。

また、加熱式たばこは無害でない可能性が高く、喫煙者が紙巻たばこから加熱式たばこに切り替えることで、本人や周囲の人にたばこ関連疾患を引き起こす害が減少するかは、明確になっていません*3。改正健康増進法では、加熱式たばこは紙巻たばこと同様に、多数の利用者がいる施設などでは原則屋内禁煙となっています。

加熱式たばこ使用者の禁煙治療も保険診療の対象

紙巻たばこ使用者のなかには、禁煙を試す目的で加熱式たばこに切り替える人もいるようです。しかし、たばこがやめられないのは「ニコチン依存症」になっているためです。加熱式たばこにもニコチンが含まれる以上、禁煙にはつながりません。

自分や周囲の人の健康のためには、禁煙補助薬を活用して禁煙に取り組みましょう。医療機関の禁煙外来では、加熱式たばこ使用者も一定の要件を満たせば保険診療で禁煙治療を受けることができます。12週間に5回のプログラムのうち、2~4回目をオンライン診療で受けられる場合もあります*4

まずは、「ニコチン依存度テスト」(厚生労働省e-ヘルスネット「TDSニコチン依存度テスト」)で自分のニコチン依存症の度合いを把握し、禁煙への第一歩を踏み出しましょう。

参考文献


平野 公康 先生

監修者 平野 公康(ひらの ともやす) 先生 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部 たばこ政策情報室長
1994年東京大学理学部生物学科卒業。専門はたばこ政策。研究テーマはたばこ煙の健康影響評価、喫煙室・喫煙所からの煙流出の評価、たばこの広告・販促・後援活動の影響。厚生労働省健康局健康課たばこ対策専門官、健康局参与(たばこ対策)として、健康増進法改正やたばこ規制枠組条約の日本国政府窓口業務に従事。望まない受動喫煙を防ぐ法律の施行やたばこ規制枠組条約の履行推進等の政策実現に貢献。